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  VOICE   No. 45 

平成 19年 5月

教材の少なさに驚きました

今月はちょっと過激な内容です。私、父親が転勤族だったもので小学校は二校、中学校は三校に通いました。最後は釧路の中学校を卒業したのですが、釧路に転校して来た時は驚きました…。何に驚いたかというと、まずは「生徒の学力」の低さですね(苦笑)。(ヤンキーの絶対数の多さ、学校の荒れ具合にも驚きましたけど!アハハ)そして、今回お話する「学校から配布される教材」の少なさにも驚きました。あれから二十年以上の歳月がたちましたが、現在でも転勤族の方の大半が同様に驚かれるようです。

地域によってどうしてそこまで差が?

最初にお断りしておきますが、私は特定の支持政党もなければ、政治団体にも属していません。ですから、これからお話する内容も主義主張に偏った見方からではないものと自分では思っています。さて、新年度に学校から配布される教科書以外の教材がありますよね。国語であれば「国語便覧」、社会科であれば「歴史史料集」、英語や数学であれば「教科書準拠の問題集」といったものです。

それら、教科書以外に配布される教材の正式名称を知らないので、仮に「補助教材」としておきましょう。結論から先に言いますが、釧路市はこの「補助教材」の数がお話にならないくらいに少ないんです。いつもお世話になっている教材会社の方への聞き取り調査によると、そもそもそれらの「補助教材」、北海道は東北地方の半分程度、九州地方の三分の一程度しか中学生に配布されていないとのことです。札幌市との比較では、釧路市は札幌市の三分の二程度の量でしかありません。

「ちょっと待った!同じ義務教育を受けていて、地域によってどうしてそこまで差があるの?」そう思いませんか?反対に「たかが教材ごときで…」と思われるかも知れませんが。

たかが教材 されど教材

でも、「たかが教材、されど教材」なんですよ。例えば中学社会の地理。はっきり言って、教科書準拠のワークや資料集などが一切なければ、よっぽど力がある人でない限りまともな指導なんてできっこないですよ。私はプロですから何とかします。何もなければパソコンを駆使して自分でプリントやテキストを作ってしまいます。(その作業にはむちゃくちゃ時間がかかります!)

ここだけの話ですが、私は中学社会の地理は、教える側の力量がとてもはっきりと出る分野だと思っています。まともに指導しようとすると、教科書のみならず地図や資料や問題集をフル動員することが必要です。ところが実際には、教科書を読んでそれを黒板にごく簡単にまとめて、はい終了。そういうケースが大半ですね。正直に言って、教えにくいんですよ、現在の中学地理は。

学校の先生も、本来はじっくりと教材研究をして、教材が不足しているのであればプリントや資料等も自作すべきでしょうが、授業に部活にと忙しい普通の先生は、なかなかそうは行きませんよね。まともな道具を与えもしないで、「はい、良い授業をやりなさい」ってそれは学校の先生に酷ってもんですよね。

さて、噛み付くぞ!

 最近の学校教材・塾用教材は、とてもよくできています。教科書の内容を学習しながら、それらの教材を上手に使うと理解度も深まります。ところが、釧路の中学生にはそれが渡されていません(または極端に少ない)。そんな中にあって、生徒のために一所懸命にプリントを作成している先生には頭が下がりますが、市内某中学校の数学の授業は、教科書の問題の解答・解説だけ(単元によってはそれすらままならない)で問題演習など一切なしという状況です。かたや「補助教材」を用いて、プラスαの授業をすることがあたり前の地域があります。釧路でももうそろそろ、まともなこと・他地域並みのことをやりませんか?心底そう思うんです。

釧路市の「補助教材」の配布について調べてみると、@各学校長が使用したい教材を市教委に申請(申請ということばが適当かどうかは分かりません)する。A市教委の許可(同じく許可ということばが適当かどうかは分かりません)を得て購入・配布する。そういう流れのようです。(いずれにせよ市教委に許可・決定権があるようです)そして、費用の負担なのですが、札幌市の場合は全額・保護者負担で、釧路市の場合は半額・保護者負担(半額は市負担)になっています。さて、噛み付くぞ(笑)!

教育予算を増やせ!

 日本経済は長引く不況を脱したとの見解もあるようですが、高い生活保護受給率と失業率、低い平均所得と有効求人倍率。ご存知のように、釧路管内の状況は相変わらずですよね…。釧路市も夕張市のように財政再建団体になるのでは?という危機感もあり、最近は街路灯の灯火数を減らすということも始めたようですね。釧路市の財政がピンチなのは知っています。

しかし、私は声を大にして言いたいんです。「釧路を本気で良くしようと思うのなら、まず公教育を何とかしよう!」「他の予算はガンガン削っても、教育予算だけは増やそう!」と。「たかが補助教材で、子どもたちの学力が上がるのか?」との意見もあろうかと思いますが、私は、微力であっても、確実に釧路の子どもたちの学力底上げにつながると考えています。

「補助教材」を用意したからといって、学校の先生がそれを消化するのは時間的にも厳しいでしょうし、場合によっては渡しっ放しといったことにもなるでしょう。しかし、それがあるだけで今よりも状況は好転するはずです。なぜなら、やる子はやりますから。それに、ご存知ですか?問題集や参考書を一冊も持っていないという子どもたちが、驚くほど多いということを…。

釧路は、他地域と比較して「通塾率」が低い地域です。教育に熱心ではない地域柄ということを差し引いて考えてみても、実に言いにくいことですが、それは「塾へ通わせたくても、通わせることができない家庭が多い」ことを意味します。以前はタブー視されていましたが、最近は親の経済力による子どもの学力格差の問題が語られるようになってきました。

さて、ずけずけと言っちゃいます。釧路の景気は相変わらずの状態ですが、地域経済が疲弊しているからといって、子どもたちの学力もそれと同じ状態のままでいいんですか?もしかして、最初からあきらめていませんか?子どもたちのために、この状況を打破すべきじゃないんですか?いつまで見て見ぬふりをし続けるんですか?

つらい思いをする子ども

最近、「オール1の落ちこぼれ、教師になる」(宮本延春著/角川書店)という本を読みました。中学卒業の学力は、漢字は自分の名前しか書けず、数学は九九が2の段まで。英語の単語はbookしか知らない落ちこぼれが、24歳にして定時制高校に入学して27歳で難関国立大学に合格。大学院を経て教師になるまでの体験を書いた本です。(教室内の「三木ちゃん文庫」にあるので、塾生にもぜひ読んでもらいたいです)

「学校は苦痛の場以外の何ものでもありませんでした。もともと何をするために学校へ行くか分からなかった私は、一日の大半を学校で過ごさなければならない自分の生活が嫌で嫌で仕方なく、授業も何をやっているのかさっぱり分からず、ただただ落ちこぼれるばかりで、机に向かって、「早く終わらないかな」とそればかり考えて外を眺めていました。

(中略)でも、落ちこぼれは落ちこぼれなりに、悩みをかかえていました。人並みではない自分の将来に不安を感じつつ、しかし、どうにもならない自分を諦めて、投げやりな気持ちになったまま、金縛りのような状態に陥っていたのです。

(中略)落ちこぼれのこの切ない思いを、今一緒に過ごす私の生徒たちに味わってほしくない。あんなつらい自閉生活は私一人でたくさんだ。だから私は今、昔の自分を救うような気持ちで、生徒たちに声をかけています。(同書より引用、下線は編者注)」

私は、塾生にいつも「たかが勉強、されど勉強」と言います。しかし、あまりにも基礎学力が低ければ、何をしようにもお話にならない、下線のような状態になってしまいます。学校の先生は当然として、僕ら私教育に携わる者もそういうつらい思いをする子どもを減らさなくてはなりません。しかし、悲しいことに現実には増えているのです…。

どうお考えになりますか?

「補助教材」を増やすと、釧路市の場合は現状だと財政負担も保護者負担も増えることになります。したがって、残念ながら給食費と同様に、滞納率も確実に増えることになるでしょう。でも、釧路市の今の補助教材の配布状況を知ると、変えたい(もっと量を増やしてもらいたい)と思う親御さんの方が多いのではないでしょうか?ちなみに、1冊せいぜい数百円程度です。

思うに市教委や学校にしても、お金が絡むので「変えようにも変えられない」という膠着状態が続いているのではないでしょうか。だったら、そこに一石を投じたいものです。この点について、保護者の皆様はどのようにお考えになりますか?よろしければ、忌憚のないご意見をぜひともお寄せ下さい。この問題は、学習塾経営者・学習塾講師として追求するにはふさわしくないと考えますので、 釧路教育活性化会議(http://www.kitamon.com/cpek/)へバトンタッチします。

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